強い勢力で日本に近づいてきた台風が、上陸した途端に風速が弱まり、勢力を弱めることがしばしばありますが、上陸した台風が、急速に勢力を弱める理由を考えてみましょう。
台風が上陸するとなぜ急速に勢力が弱まるんだろう
台風にとってみると、海上は生まれ故郷でもありすくすくと成長できる居心地の良い場所なのです。
一方陸上は、凸凹してとても居心地が悪いのです。
そんな様子を詳しく見ていきましょう。
海上での台風の様子
台風が発生して大きく成長するのは、熱帯地方の温かい海の上です。
海の上で成長するときの台風の様子をみてみましょう。
温かい海には台風の食事である水蒸気がたくさんある
台風は温かい海上に立ち昇る水蒸気をエネルギーとして発達します。
いわば、水蒸気は台風の食事と言っても良いでしょう。
台風が発達するためには、海面水温が26~27℃以上の暖かさが必要です。
海面水温が暖かくなると、水蒸気が大量に発生して、台風の食事になるのです。
逆に25℃以下の冷たい海水では、水蒸気の発生が少ないので台風は成長できません。
海上には邪魔者がいないから強い風が吹ける
海上には凸凹がなく邪魔者がありませんから、台風が吹いた風は減衰されることなく遠くまで届きます。
台風の風は、北半球では反時計回りに吹くので、台風の風は渦巻を作ります。
台風が吹き出した風が減衰されないのですから、風の渦巻が強くなり大きさも大きくなります。
海上では台風はどんどん強く大きくなる
食事となる水蒸気が大量に供給されて、吹き出した風が邪魔されないのですから、海上の台風はどんどん成長して大きくなります。
成長しながら西に流れて北上し、やがて中国大陸や日本に上陸します。
(上陸しない台風もたくさんあります。)
陸上での台風の様子
台風は上陸すると急速に勢力を弱めてしまいます。
勢力を弱めて台風から一般の熱帯低気圧に戻る場合と、温帯低気圧に姿を変えて別の活躍の場を探す場合があります。
上陸してからの台風の様子をみてみましょう。
陸上には台風の主食である水蒸気がない
台風が勢力を伸ばすためには主食とも言うべき水蒸気の供給が必要です。
もしも水蒸気の供給が絶たれると、成長はおろか勢力を維持することすらできません。
海上では、無限とも思える大量の海水の上に台風が発生し、水蒸気は食べ放題でした。
しかし、上陸してしまうと陸上には、海のような大量の水はありませんから、当然水蒸気もありません。
台風にとっては、絶食が続き飢餓状態になってしまいます。
飢餓状態で衰弱しない方がおかしいです。
当たり前だけど、主食を絶たれた台風は、勢力が衰えて弱まって衰弱するしかありません。
陸上には凸凹が多いので風が弱まる
海上では平坦で邪魔者がないので、台風から吹き出した風は遠くまで届き、大きな渦を作るのにとても有効でした。
台風は強く大きな渦を作ることで、勢力を拡大してきたのです。
ところが上陸してしまうと、山や樹木、人工的な建築物など、風を邪魔するものがたくさんあり凸凹です。
台風は、勢力を維持するために風を吹き、大きな渦を作ろうとするのですが、山や樹木などに邪魔されて同心状の渦の形状が崩れてしまいます。
陸上の邪魔者の存在。
これが、上陸した台風が衰弱する2つ目の理由なのです。
陸上では勢力が衰えて衰弱するしかない
台風は主食である水蒸気の供給が絶たれて、体力維持ができない状態に追い込まれます。
更に、風の邪魔をする山や樹木の存在により渦の回転力が弱まるという2つの理由により、上陸した台風は急速に勢力を弱めることになるのです。
台風が成長してきた過程と時間に対して、上陸した台風の衰弱はあまりにも急速ですが、明確な2つの理由によることが解明されています。
まとめ
熱帯地方の温かい海上で発生し成長して日本まで達した台風は、上陸すると勢力を急速に落とします。
その理由は
- 陸上には水がないので、台風の主食である水蒸気の供給が絶たれるので、衰弱する。
- 陸上には山や樹木、人工的な建造物など、台風の風を阻害する因子がたくさんあり、渦の構造を壊す働きをする。
- その結果、上陸した台風は、急速に勢力を弱めることになる。