誰でも受験できる国家資格として人気が高い気象予報士試験ですが、合格率が5%前後と大変難しい試験として知られています。
過去52回に及ぶ試験の結果を眺めながら、気象予報士試験の合格率がなぜ低いのかについて考えてみます。
気象予報士試験の合格率の推移
気象予報士試験を運営しているのは、一般財団法人 気象業務支援センターです。
気象業務支援センターでは、毎回の試験を実施したあとで、受験者数や合格者数、合格率などを発表しています。
気象予報士試験合格率の推移グラフ
上のグラフは、過去52回の気象予報士試験合格率の結果です。
試験は毎年2回実施されています。(初年度の平成6年度だけ3回実施)
通算の平均合格率は5.5%ですが、初期の5回ほどの合格率はとても高いです。
特に、初回は18%と通算平均値の3倍以上も高いのです。
初期の5回を除いた平均値を計算すると5.1%になります。
これが実質的な平均値と見るべきでしょう。
初期の気象予報士試験合格率が高い理由
お天気キャスターの森田正光さんが、初回の気象予報士試験に落ちた話は有名ですね。
2回目の試験に合格してなんとか面目を保ちました。
初回の試験には、森田さんのようにお天気のプロのような人たちがたくさん受験したのです。
想像になりますが、お天気キャスターの他にも、自衛隊や航空会社で気象を担当していた人たちや、海運会社や物流会社の気象専門家もいたかもしれません。
そのようなプロやセミプロのような人が受験したので、初回の合格率が高いのは当然なのです。
(それでも18%なのですから難しいと言って良いかもしれませんね)
初回で不合格だったレベルの高い人たちが引き続きリベンジ受験をしたので、その後の数回の合格率が高いのもうなずけます。
このような、スタート直後のゴタゴタも5回目が終わる頃には、ほぼ治まったようです。
気象予報士の合格率が低い理由
難関と言われる国家試験の中でも、トップクラスの一つは司法試験でしょう。
裁判官や検事、弁護士になるための資格ですが、試験合格率は70~80%なのです。
もう一つ挙げたいのが医師の国家試験です。
出身大学によって差があるようですが、平均すると90%前後です。
さて、これに対して気象予報士の合格率が5%だから難しいと言えるでしょうか。
受験者の選別をすれば合格率は上がる
医師の国家資格については、大学の医学部卒業が受験資格の条件になっていますから、中学・高校生が受験するなどありえません。
受験者は、医師としての高度な専門教育を受けたレベルの高い人ばかりです。
司法試験についても、ロースクール(法科大学院)卒業が受験資格の条件になっていますから、医師の試験と同様に、中学・高校生が受験するなどありえません。
このように、医師にしても司法試験にしても、受験資格でかなり厳しく専門家に絞ることによって、合格率が80%とか90%を維持しているのです。
合格率が80%だからといっても簡単な試験ではありません。
司法試験では、ロースクール卒業の資格を有していない人たちへの救済方法として、ロースクール卒業の代わりに、予備試験合格でも良いのです。
だけど、予備試験の合格率は4%程度ですから、とても難しいことは、誰でも分かります。
これに対して、気象予報士試験は、受験者の選別を一切していないので、合格率が低くなるのはアタリマエのことです。
もし仮に、気象予報士の受験資格を、大学で気象関係の単位取得者とかに限定したら、合格率は、格段に上がることでしょう。
話題になる資格だから受験者数が多い
話題にならないけど難しい資格はたくさんある
専門分野としては必要な資格で相当難しいのですが、一般的に話題になりにくい資格がいろいろあります。
例えば、『不動産鑑定士』という資格があります。
短答式試験と論文式試験を受けなければならず、トータルの合格率は2パーセント程度でとても難しい試験です。
でも、この資格を必要としている専門領域以外の人達にはあまり知られていないので、一般世間の人気は高くありません。
だから、不動産取引に関係ない一般の人が、不動団鑑定士の試験を受けようとは思わないのです。
苦労して資格を取得しても、一般の人にからは「あっそう!」とか「なにそれ?」と言われるだけで、大した評価をしてもらえません。
不動産鑑定士の他にも、取得が難しい国家資格は『プロジェクトマネージャー』『 ITストラテジスト 』『計量士』『土地家屋調査士』など、たくさんあります。
お天気は誰にでも関係ある
不動産取引、情報処理技術、軽量や土地家屋調査などは、関係する業界にいなければ、普段の生活では、接触する機会がありませんから、価値も分かりません。
それに対して、お天気は、関係しない人がいないと言えるほどに生活に密着しています。
単に日常の生活だけではなく、農業、運送業、交通機関、イベント、ファッション、観光業など、ほとんどのビジネスにお天気は密接に関係しています。
それだけに、気象予報士に関する認識も身近なものと感じられるのです。
なによりも、毎日毎日、お天気お姉さんをはじめとした気象予報士キャスターがテレビに出てくるので、気象予報士という言葉を耳にする機会も多いのです。
受験者のレベルが低い
「気象予報士試験の最年少記録更新」なんていうニュースがしばしば報道されていますね。
実際、最年少記録は、小学6年生の女の子です。
こんなニュースを聞くと、小学生で合格できるなら俺だって、私だってという輩がうごめき出すのは必然性があります。
しかし、この子達は『天才』というべき、特に選ばれた子どもたちです。
最年少記録を更新した子どもたちのその後の進路を調べたので見てください。
彼らにとって、東大合格は当たり前の子どもたちなのです。
このような天才少年少女たちと争っても、凡人たちには勝ち目はありませんが、無謀な受験者が増える要因になっています。
予備試験を導入したら合格率は上がる
司法試験においては、ロースクールを卒業していない場合は、予備試験に合格することによって司法試験の受験資格を得ることができます。
予備試験の合格率は3パーセント程度と非常に難しいです。
予備試験とはやや正確が違いますが、不動産鑑定士や公認会計士の試験では、まず短答式試験に合格する必要があります。
やや強引ではありますが、短答式試験を予備試験とみなすこともできそうです。
すなわち、短答式試験で足切りをして、通った人だけが、本試験の受験資格があると考えることができます。
非常にざっくりまとめてしまうと、短答式試験の合格率は20%程度で、本試験の合格率が40%なので、トータルで8%位になります。
気象予報士試験にも予備試験がある?
気象予報士試験は、学科試験と実技試験に分かれています。
学科試験は、『気象に関する一般知識』と『気象に関する専門知識』の2科目に分かれています。
学科試験は、5択問題が15問のマークシート方式なので、短答式の予備試験とみなすことができます。
学科試験が予備試験の性格を有しているというのは、学科試験に合格しないと、実技試験の採点は行われないのです。
しかも、学科試験に合格すれば1年間(次回と次次回試験)の学科試験は免除になるのです。
言い換えれば、学科試験は実技試験のための予備試験で、その有効機関は年間であると言えなくもないのです。
気象予報士試験合格率の内訳
下の図は、気象予報士試験の結果です。
ある回の結果ですが、最近はこんな風でだいたい同じ傾向です。
学科試験は、一般知識と専門知識の2科目に分かれているので、1科目だけ免除の人と2科目免除の人がいます。
- 学科免除無しの人の合格率は1%
- 学科の1科目だけ免除の人の合格率は8%
- 学科が2科目免除の人の合格率は20%
数値は多少変動しますが、この傾向はだいたい変わりません。
学科試験を短答式予備試験として、実技試験を本試験とみなすと、本試験の合格率は20%になります。
初回のプロ・セミプロ集団の合格率が18%だったことと比べてみると、学科試験で選抜された人たちの成績に近いことが分かります。
まとめ
- 気象予報士を身近に感じるので力量不足の人がたくさん受験するため、合格率が低いのです。
- 気象予報士試験の最近の合格率は約5%です。
- 学科試験で選抜された集団の合格率は約20%です。
- 初回に受験したプロ・セミプロ集団の合格率は18%でした。
- このことから、学科試験で絞り込んだ結果が、本当の気象予報士試験の合格率と言えるのではないか
すみません、勝手な個人的な見解です。